「学生の本分」とは? 学生懲戒規程に書かれていること

2019/10/01

処分・弾圧

t f B! P L

「学生の本分を守らない行為」が話題に

2019年9月13日に出された3名の京大生への無期停学処分を受けて、「学生の本分を守らない行為」が話題になっています。

→ 学生の懲戒処分について(2019年9月12日)


以下、Twitterから反応を抜粋。

「気に入らない学生をなんでも『学生の本分を守らない』として処分できるようになる」
「『学生の本分を守らない』を振りかざす大学は『大学の本分を守らない』大学だ」
「『学生の本分を守らない』って学生の定義を勝手に決めてる連中がもれなく学生じゃなくて経営陣という点を取っても、大学の自治は壊れている」
「極めて抽象的かつ恣意的な根拠により、学生を無期停学処分にするなどという、京大当局の権威主義的な対応は極めて問題」
「タテカンの撤去を妨害したら停学になるのか。。。異常だ。。。ちゃんと話し合う場を設定すればいいのにな」

などなど。
ネットニュースでも話題になっています。
→ 職員の執務妨害で「学生の本分を守らない」から無期停学 京大「厳罰化」は妥当なのか

ちなみに、紙の新聞は相変わらず公式発表そのままがほとんど。
→ 京都新聞

「学生の本分」は定義が存在しない

「学生の本分」とは何かについて、学生意見箱に回答があったので見てみましょう。

「学生の本分」について
【ご質問】(投稿日:2019 年 9 月 13 日)
令和元年 9 月 10 日付けで三名の学生が「学生の本分を守らない者」として処分されました。ここで言う「学生の本分」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。「学生の本分」の範囲がわからない以上、勉強や研究以外のことをすると停学処分になる可能性があり、怖くてなにもできません。

【回答】(回答日:2019 年 9 月 24 日) (学生担当理事・副学長 川添信介)
「学生の本分を守らない者」とは、京都大学学生懲戒規程に規定する (1)京都大学(以下「本学」という。)の諸規程又は命令に違反した者 (2)本学の教育研究活動を妨害した者 (3)刑罰法令に触れる行為を行った者 (4)本学の名誉・信用を著しく失墜させた者 (5)前各号に準ずる不適切な行為を行った者のことを言います。

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/education-campus/cli/mail/documents/2019/a0400.pdf


お分かりでしょうか? 何と「学生の本分」の内容を質問されているにも関わらず、「学生の本分を守らない行為」を回答しているのです。さすが文学部長までやった川添教授。すばらしい読解力です。

実は、京都大学が懲戒処分をするたびに持ち出す「学生の本分」なる言葉には、定義が存在しません。京大の理念や規程を見渡しても、存在するのは「学生の本分を守らない行為」のみ。その内容が定義づけられたのは2017年2月に学生懲戒規定を改訂したときです。

改訂された学生懲戒規定が最初に適用されたのは、同学会中執の2015年反戦バリケードストライキに対してです。このとき、京大当局は「威力業務妨害」で6名を刑事告訴して2016年2月末に逮捕させましたが、全員が不起訴釈放になりました。「反戦ストは無罪」となったのです。

こうして弾圧が失敗した京大当局は、今度は16年7月に4名を無期停学処分。しかし4名はめげることなく学内で活動を続けたため、京大当局は17年2月28日に学生懲戒規定を改訂し、それを使って17年7月に4名を放学処分にしたのです。

懲戒規定の改訂前は、処分に向けた具体的なプロセスが書いていませんでした。昔は教授会の裁量で決めていたとも聞いています。しかし今は教授会が反対しても本部(役員会)がゴリ押しで処分内容を決めてしまうようです。「ガバナンス改革」によって総長・役員会に権限が集中し、教授ですら文句を言えない状況は異常だと言えます。


無限に拡大解釈できる「学生の本分を守らない行為」

さて、改めて学生懲戒規定の「学生の本分を守らない行為」の内容を見てみましょう。

(1) 京都大学(以下「本学」という。)の諸規程又は命令に違反した者
(2) 本学の教育研究活動を妨害した者
(3) 刑罰法令に触れる行為を行った者
(4) 本学の名誉・信用を著しく失墜させた者
(5) 前各号に準ずる不適切な行為を行った者

まず、(5)の「準ずる不適切な行為」について。何がどう不適切なのか書いていない以上、無制限です。実際に、今回の無期停学処分の理由に上げられた「不審者(高田さん)逮捕の妨害」「タテカン撤去の妨害」「出禁者追い出しの妨害」などはすべてこれに該当するとしています。職員の業務がいかに不当であっても、抗議したり妨害したりした時点で処分。まさに「何でもアリ」です。

他。(1)「命令に違反した者」などは命令が正当かどうかが書いていません。どんな無茶振りでも、学生が従わなければ処分できるということになります。

(2)は直接的にはストライキ対策でしょう。

(3)については、京大と無関係な事件や上告・再審中の事件についてどこまで京大当局が懲戒できるのか疑問が残ります。

(4)「本学の名誉・信用を著しく失墜させた者」に至っては、まず山極総長と川添副学長の名前を上げるべきでしょう。タテカン規制をはじめ、「自由の学風」をコテンパンに粉砕した戦後最悪の自治破壊者たちです。自分のことを棚に上げてよくもまあこんなことが言えたものです。

また、量刑については何も書いてありません。些細なことでも「学生の本分を守らない行為」と言い張れば、どんな処分でも可能になってしまいます。

異議申し立てが許されない

今回無期停学処分を受けた学生の一人は、面談の場で「停学を解除してほしければ、全面的に謝罪し、集会や大学への申し入れなどに今後参加するな。卒業のために勉強しろ」と言われたようです。具体的に何を反省すればいいのかを聞くと「反省の色がない」と言われる始末。

懲戒規程では一度だけ弁明の機会が与えられます。しかしそこで処分内容に疑問を挟むことは許されていません。疑義を唱えた瞬間に「反省の色がない」として処分が下るのです。大学運営に一切口を出さず勉学に励むことを誓ってはじめて「減刑」されます。あまりにも一方的です。

しかも一度下った処分に異議を唱えることはできません。処分の撤回を求める署名を集めても受け取りすらしません。実際、反戦ストライキに対する4名への処分に対して1万筆以上の処分撤回を求める署名が集まっていますが、未だに京大当局は受け取りを拒み、まして対話の機会など全くありません。

ちなみに2018年3月、被処分者である作部羊平(元同学会委員長)がばったり山極総長に会った際に署名の受け取りについて聞いたところ、「1万筆集まったら考えてやる」という答えでした。即座に「すでに集まってます」と言うと、山極総長は突然態度を豹変させて「同学会からは受け取らない。中核派とは話さない」と言い放ち、タクシーに乗って逃亡しました。わずか30秒の手のひら返しに唖然としたものです。

結局、論理も何もなく「当局のやることはすべて正当! 『学生の本分』は当局に一切逆らわず、卒業のために与えられたカリキュラムを消化することだ!」というのが京大当局の立場です。

学生は当局の奴隷ではありません。人格を持ち、主体的に活動する人間です。中身のない「学生の本分」を振りかざして「気に入らないやつは全員処分」などというあり方は到底許せるものではありません。そもそも教育の根幹は「批判精神を養うこと」であり、研究の本質は「真理を追求すること」であったはずです。批判を許さず権力をかさに着て処分を下すのが教育でしょうか? 立場の弱い者を屈服させて自らの正当性を主張する人間に研究を語る資格があるでしょうか? 「大学の本分」を見失い、身勝手な「学生の本分」を押し付ける今の京大の体制を打倒することが求められています。

このブログを検索

今後のスケジュール

イベント
 未定

運営会議(※)
 2月9日(火) 14:00〜
 ※ 参加・見学希望者はDM・メールで連絡をお願いします。

ブログ アーカイブ

関連記事

QooQ