新型コロナウイルス感染拡大に伴う京都大学当局への十一項目要求【申入書】

2020/04/20

声明・申入書

t f B! P L




新型コロナウイルス感染拡大に伴う
京都大学当局への十一項目要求


京都大学総長 山極壽一 殿
京都大学 学生・図書館担当理事 川添信介 殿
京都大学 教育・情報・評価担当理事 北野正雄 殿
京都大学 総務・労務・人事担当理事 平井明成 殿
京都大学 プロボスト 湊長博 殿


 現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るっている。日本においても都市部を中心に感染者が増加しており、今後さらに拡大していくことは明らかだ。
 こうした状況の中、京大当局は3月26日の時点で改めて授業を行うことを明言し、その後京都産業大学でのクラスター感染と京都市長からの緊急要請を受け、授業開始一週間前の4月1日になってようやく5月6日までの全授業の休講を決定した。このあまりにも場当たり的な対応は混乱を招き、学生やその家族に大きな負担を強いた。また、京大当局は5月7日以降に授業を再開するかどうかの決定についてもわずか一週間前の4月30日までに判断するとしており、学生を先行きの見えない不安に陥れている。
 さらには学生への経済支援や検査の推奨、衛生用品の配布、感染者隔離のための施設開放などの積極的な施策は何一つ行わないにも関わらず、課外活動の制限だけは先んじて行い、学生に責任を転嫁してきた。
 学生の生活への無理解と無責任から生じるこのような京大当局の一連のあり方に対し、強く抗議する。

 以下、学生の立場から必要な処置として十一項目を挙げ、その迅速な対応を求める。

一  前期中の対面授業をすべて休講にすること

新型コロナウイルスの感染拡大はこれからが本番であり、1年以上の長期戦を構えるべき状況である。大学において、特に室内で対面で行う授業は「3つの密」(密閉空間・密集場所・密接場面)が重なり、さらに授業ごとに不特定多数が集まるため、安易に再開すべきではない。また授業再開時期が未定の状態が続くと、学生が居住場所を含む今後の計画を立てられず、無為な時間を強制される。
 したがって早急に対面で行う前期授業をすべて休講にすることを決定し、新型コロナウイルスの感染状況を見極め、十全な対策を講じた上で後期に再開するかどうかを検討するよう求める。

二  オンライン授業の開始にあたって最大限配慮すること

現在、対面での授業に代替するものとしてオンライン授業が検討されている。しかし総務省の発表した2018年「通信利用動向調査」では、インターネット(個人)とPC(世帯)の普及率はいずれも8割未満となっており、また通信利用制限の存在も考えると、すべての学生が満足にオンライン授業を受講できる環境にないことは明らかだ。
 したがってオンライン授業を開始するにあたり、PCのない学生にPCないしはその購入資金を支給すること、講義動画やレジュメ・ノートを公共のWi-Fiなどを用いていつでもダウンロードできる形式にすること、レポートなどの期限を広く取って柔軟に対応することなどの配慮が不可欠である。特に単位取得については、講義室での試験が困難である以上、レポートの提出などの簡便な手段を用いるべきである。こうした配慮を最大限行なった上で、オンライン授業を開始するよう求める。

三  履修登録期間の延期

そもそも、京大当局は2019年度から履修登録期間を早期化・圧縮し、履修(人数)制限科目に至っては授業開始前に抽選を行い、学生が授業を実際に受けてから履修科目を選択することができない状況が生まれていた。今年度は授業延期に伴いさらに悪化し、すべての科目において受講なしの選択が強制されている。
 学生には学習内容を自ら選択する権利がある。そして一度も授業を受けることなくその内容を判断することは不可能である。履修登録期間を延期し、授業再開後に改めて設定するよう求める。

四  キャップ制の廃止

京大当局は今年度からキャップ制を強化し、履修できる全学共通科目と学部専門科目の合計を30単位に制限した。このような制限は出席義務の強化と一体で、学生個々人の能力に応じた自主的な学習活動を不当に制限するものであり、認められない。
 キャップ制は、文部科学省が「単位制度の実質化」に伴う評価基準の一つとして設定されているものの、導入に義務はなく、各大学の裁量に委ねられている。今年度は特に授業延期に伴って単位取得が困難な状況にあり、履修を制限すべきではない。キャップ制の廃止を求める。

五  自習支援の充実

現在授業そのものが停止し、さらに今年度前期の単位取得の見通しが立たない中、後期以降に負担が集中することは避けられない。それを少しでも緩和するとともに、意欲のある学生の学習活動を支えるために、履修登録や単位取得いかんに関わらず、オンラインで閲覧できる講義動画やレジュメ・ノート・参考書紹介などの学習の手引を充実化することを求める。
 また、現在図書館が大阪府・兵庫県への「緊急事態宣言」を受けて5月6日まで臨時休館となっているが、図書館は学生の自習や研究のために必要な施設である。利用人数や席数などを調整した上で開館することが望ましい。さらに、遠方に帰省している学生向けに、郵送による貸し出しを可能にするよう求める。

六  授業再開後に授業時間・期間を延長しないこと

昨今、文部科学省の求める「単位制度の実質化」に伴い、1単位につき45時間の学習時間、15回の授業などが求められている。東京大学では授業回数を確保できないため授業時間を105分に増やす対応が取られた。今回の授業延期に伴い、再開後に休暇をつぶした補講や授業時間の拡大が行われる可能性がある。
 こうした対応は一律の基準に学生を当てはめて自主性を奪うだけでなく、教職員に負担を強いるものであり、認められない。特に夏季休暇中に行う補講は大学院試験の準備を妨げるものであり、なお認められない。大学設置基準で「教育上必要があり、かつ、十分な教育効果をあげることができると認められる場合は、この限りでない」とあるように、授業時間・期間については各大学である程度の裁量が認められている。授業再開後に授業時間・期間を延長しないよう求める。

七  授業料の無償化

現在、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、解雇や休職などで経済的な困難を抱える世帯が増加している。これに対して京大当局は日本学生支援機構の給付型奨学金を紹介しているが、生計維持者の死亡あるいは失職・収入激減に加えて学生の側にもGPA上位2分の1であることを求め、審査を通っても振り込まれるのは数カ月後である。また、政府も一世帯30万円の給付を検討しているが、受け取れる条件が厳しく、申請から受け取りまで時間がかかる。貯蓄ゼロ世帯も増えている中、こうした対応の遅れは致命的である。
 こうした状況を勘案し、さらに授業が延期になっていることも含め、京大当局に対して直ちに前期授業料を無償化し、各世帯へ返還することを求める。京都大学「ファイナンシャルレポート2019」によれば、学生納入金は年間で約120億円、収入全体における割合は7%程度である。さらに30年度決算では資産が88億円増加し、現金・預金に限っても783億円存在することが明記されている。授業料無償化は十二分に可能である。

八  課外活動の自粛要請と施設使用の一時停止の撤回

京大当局は3月31日付で『課外活動の自粛及び施設使用の一時停止について』を発表し、「課外活動についても、新型コロナウィルス感染拡大を招く機会となり得る」ことを理由にすべての課外活動の自粛を求めると同時に、学内施設を使用禁止にし、ビラ配布などの勧誘活動全般についても「絶対に控える」よう求めた。
 この通達は、立て看板規制やオープンキャンパス・入試におけるビラまき規制、11月祭の飲酒規制・日程短縮の強要などに続く「感染防止」を口実にした規制強化であり、断じて認められない。大学改革と一体の学生自治解体攻撃、また、改憲ー緊急事態条項導入の先取りと言うべき内容である点からしても、許すことはできない。
 学生は自ら考え行動する人間である。規制強化を進めるばかりで新型コロナウイルス感染拡大に際して何ら積極的な防止策を講じることができていない役員会に比べてはるかに意識的に、責任をもって課外活動を運営することができる。新歓コンパの延期や「3つの密」を避けての活動、少人数のグループを作って接触者数を減らすなど、いくらでも感染防止の方策はある。むしろ、京大当局は広い講義室を開放するなどして、濃厚接触を避ける形での課外活動ができるよう保障するべきである。
 京大当局に対し、課外活動の自粛要請と施設使用の一時停止を撤回するよう求める。

九  弾圧経費を感染防止対策費に回すこと

京都大学は2017年度から弾圧専門の警備員として、年間約2600万円を使って株式会社フォールズへの業務委託を行っている。他にも立て看板の規制や、吉田寮生への訴訟など、学生自治を解体するために莫大な費用を投じている。
 その一方で京大当局は、学生との対話を拒否し、今回の新型コロナウイルス感染拡大においても学生への経済支援や検査の推奨、衛生用品の配布、感染者隔離のための施設開放など、学生の生活と命を守るための施策については無責任を貫いている。
 大学はその施設や人的リソースを用いて、危機的状況に対応する力を持っているはずである。そして対応策の協議・実行のためにも学生自治や教授会自治は不可欠である。直ちに学生自治への攻撃を止め、その経費を感染防止対策に用いるよう求める。

十  教職員が不利益を被ることがないようにすること

上記のような対策を行う上で、教職員が不利益を被ることがあってはならない。特に非常勤教職員の立場は非常に不安定である。すべての教職員に対して、一方的な解雇や休職、就業時間の変更を行うことなく、休業する場合はその補償を徹底するよう求める。
 また、外注先の労働者の待遇についても、最大限配慮するよう求める。

十一  学生との団体交渉の設定

上記の九つの要求に加え、今後新型コロナウイルスの感染の状況が変化した場合の施策等について、学生との団体交渉を設定するよう求める。その際、感染防止のために消毒用アルコールやマスクを準備するとともに、現在遠方にいる学生も参加できるようオンラインでの配信を認めよう求める。
 京大当局は、国立大学法人化を機に学生との団体交渉を拒否するようになり、情報公開連絡会を含む対話の機会を一掃してしまった。教授会も権限を奪われ、そうして「大学の自治」を解体して役員会が独裁的な権限を握った結果が、新型コロナウイルス感染拡大にまともに対応できない現在の有様である。国際高等教育院に対して「吉田南キャンパスの人口密度を4割まで下げろ」と一方的に無茶な要求をしておいて、土壇場でひっくり返す無能な上司の姿が、今の役員会である。団体交渉を開いてまともに学生と討論する能力すらないのであれば、早急に今の役員会を解散し、学生自治・教授会自治を基盤とする新たな大学運営を築こうとする学生・教職員の活動を妨害しないように求める。


以上

2020年4月10日
京都大学全学学生自治会同学会 執行委員会

このブログを検索

今後のスケジュール

イベント
 未定

運営会議(※)
 2月9日(火) 14:00〜
 ※ 参加・見学希望者はDM・メールで連絡をお願いします。

ブログ アーカイブ

関連記事

QooQ