日本学術会議会員候補に対する任命拒否と今後の行政改革に対する抗議声明

2020/10/15

処分・弾圧 声明・申入書

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日本学術会議会員候補に対する任命拒否と今後の行政改革に対する抗議声明


2020年10月14日

京都大学全学学生自治会同学会執行委員会



 菅義偉首相が日本学術会議の推薦した会員候補者105名のうち6名の任命を拒否したこと、さらにこの問題を水路に日本学術会議の行政改革を進めようとしていることに強く抗議します。以下に4点にわたって問題点を指摘します。


① 権力による学問領域への不当な介入である

② 政府への服従を強いる見せしめの弾圧である

③ 大学改革と一体で学問・教育を支配下におく攻撃である

④ 人々が政治について批判的に考え行動する機会を奪っている



① 権力による学問領域への不当な介入である

 菅首相は任命拒否の理由として「総合的・俯瞰的に判断した」と述べていますが、その判断の根拠は一切明らかにされていません。また、この判断は官邸の独自の判断であり、日本学術会議側の意見は完全に無視されています。これのどこが「総合的・俯瞰的」なのでしょうか。

 そもそも日本学術会議は政府の単なる下部機関ではありません。かつて学問が戦争に動員された歴史の反省から、政府から独立して学問の自由を守り社会を発展させる科学者の自主的な全国組織として設置されました。そして「科学者の国会」として日本のアカデミー全体の意思を形成する役割を担ってきました。

 政府は「学問の自由」を保障する義務を負っています。しかし今回の菅首相による任命拒否は、官邸の独自判断をもって科学者内における意思形成の過程そのものに土足で踏み込み、学問の在り方を不当に制限するものです。明確な「学問の自由」への侵害であり、決して許されません。

 

② 政府への服従を強いる見せしめの弾圧である

 今回の任命拒否は、権力側が科学者個人を標的にして、意思形成の過程から排斥するという異常な弾圧です。

 任命を拒否された6名は、全員が安保関連法や共謀罪など、安倍政権下の安保政策や治安立法に対して明確に反対の立場を表明してきた科学者です。未だ明かされない任命拒否の判断根拠に、こうした政府に対する批判的な活動があるということは多くの人の共通認識となっています。

 つまり菅首相のやったことは、6名を見せしめにすることで他のすべての科学者、あるいは科学者以外の人々も含め、「政府を批判すると不利益を被る」という認識を刷り込み、自発的に服従することを強制するものです。戦前の滝川事件と同様、戦時下体制への道筋をつける治安弾圧であり、決して認めることはできません。

③ 大学改革と一体で学問・教育を支配下におく攻撃である

 特に重要なことは、今回の問題は日本学術会議にとどまらず、大学・教育・学問全体を政府の支配下におく政策の総仕上げとしてあるということです。

 そもそも、日本学術会議は一貫してその影響力を弱められてきました。もともとは日本の科学政策は政府側と日本学術会議側がそれぞれ半数を占める科学技術行政協議会で議論されてきました。しかし原子力政策を推進するための科学技術庁の設置をきっかけに、1959年には日本学術会議会長1名だけが参加する科学技術会議が設置され、日本学術会議は単なる諮問機関として位置づけられることになり、2007年以降はその諮問すら行われない状況となっています。

 さらにこれと一体で、2004年の国立大学法人化を最大のきっかけに、大々的に大学改革が進められてきました。当時文部科学省文教部会長だった麻生太郎が「国の意思を法人運営に反映させる」と宣言した通り、予算や人事を通じた大学政策への介入が一挙に進みました。そして教授会の権限縮小と学生自治会の解体によって大学の自治を解体し、暴力的な懲戒処分や逮捕をも利用した言論弾圧が加速しています。

 今回の任命拒否と行政改革の議論は、大学と同様に日本学術会議への支配を強めることで、教育・学問の拠点である大学にとどまらず、あらゆる権力批判を圧殺して教育・学問を政府の都合のよい道具として使える環境を完成させるものです。


④ 人々が政治について批判的に考え行動する機会を奪っている

 学問は科学技術の開発を通じて社会発展に資するだけではありません。

 2015年の安保関連法成立過程において、100万人とも言われる人々が国会前に集まって抗議しました。その根拠のひとつが、当時憲法学者の大半がこの法律を「憲法違反」と断じたことです。

 任命拒否された6名のうちの1人は、この過程において国会で違憲を表明した憲法学者でした。今回の任命拒否は、科学者への弾圧を通じて、人々が政治について批判的に考え行動する機会を奪います。これはまさしく愚民政策と呼ぶべきであり、民主主義を根本から否定する暴挙です。


 以上より、私たち京都大学全学学生自治会執行委員会は、日本学術会議に対する今回の任命拒否と、今後の行政改革に対して強く抗議するとともに、菅首相に対して今回排除された6名を直ちに任命することを求めます。


 私たちは、京都大学においてこうした言論弾圧や戦争政治に全力で抗議してきました。安保関連法と大学における軍事研究の阻止を掲げて2015年にストライキを行い、その後の停学・退学処分などの激しい弾圧に対して諦めることなく闘ってきました。2017年以降には表現の自由を奪う立て看板規制やビラまきへの弾圧と闘い、その実態を暴露してきました。

 口先の政治批判は、それを実現する行動が伴わなければ無力です。そして今、それを表明する場すら失われようとしている中で、改めて学問・教育の現場である大学において、科学者、そして次の社会を担う学生が、さまざまな弾圧を跳ね除けて力を取り戻すことが必要です。私たちは問題意識を持つ全国の人々と連帯し、京都大学から今の社会を変える活動に今後も全力で取り組む決意です。

以上


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